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  • S.Yamauchi

「門司港地域複合公共施設整備事業」公聴会報告

先日10月14日、「門司港地域複合公共施設整備事業」土地収用法23条規定に基づく、県公聴会が開催されました。私も公述人として意見陳述を致しました。以下当日の発言内容です。


 本日はお集まりいただきましてありがとうございます。また議長様よろしくお願いいたします。私は公述人の山内正一と申します。本日はこのような意見陳述の場を与えていただき心より感謝いたします。今日は北九州市が土地収用法にもとづく事業認定を求めました「門司港地域複合公共施設整備事業」につきまして、一市民の立場から意見を述べさせていただきます。初めに、私個人と本事業の関わりについて少し述べさせていただきます。私は1956年に当時の門司市の大里新原町に生まれました。現在は、門司区上二十町に住んでおり、建築設計事務所を営んでおります。市政には常日頃から、関心をもっていまして、まちづくり等にも、少しかかわっております。現在、私が住んでおります上二十町は大里地区にあり、今回の門司港駅横の予定地から、少し離れており、該当の予定地の土地所有者でもありません。しかし、市民の税金を多額に使う事業ですので、市民として、また建築の専門家の立場からも、これからの門司区がより良い街に、発展していけるよう、微力ではありますが、今回、意思表示をすべきだと思いまして公述人に応募しました。事前の申出書に沿って以下説明し、意見を述べさせていただきます。

 まず、最初に結論を述べますが、今、企業者である北九州市が述べられました、土地収用法第16条の事業の認定主旨について、私は反対の立場であります。起業者の事業認定は土地収用法の第20条の認定の要件に反し、認定しないという結論を審議会で出していただくようお願いをいたしたい、と思います。この土地収用法に基づく事業認定審議会が本日の公聴会を受けて、後日県主催で開催されると聞いておりますが、この運営に関して、本日は審議会の有識者委員の皆様は見えていませんので、審議会委員の方々に是非、本日の発言内容を委員会で配布していただきたいと思います。またその審議会にあたり、審議委員の皆様には、是非、門司港地区の収用予定地を見ていただいて判断していただきたい。机上の判断に、しないようにしていただきたい、このように思います。

 まず初めに、本事業認定の根拠法である土地収用法に照らして意見を述べさせいただきます。(事前に提出いたしました、補完資料を参考の上お聞きください)


第1に、収用法第20条4項の「土地を収用し、又は使用する公益上の必要があるものであること」に該当することに関してですが、起業者(北九州市)は認定を申請する理由に「人口減少や高齢化社会の為、コンパクトなまちづくり」を進めて行く為に本事業が必要であり、2012年「公共施設のマネジメントのあり方」を諮問し、公共施設マネジメントにもとづき2015年「門司港地域における公共施設の再配置」の考えをしめしたとありますが、今回の事業計画は10年前の施策に基づくものではありませんか。

 門司市民会館、門司生涯学習センター、門司勤労青少年ホーム、門司図書館、旧国際友好記念図書館、門司区役所、港湾空港局を一つの建物に集約し、門司港駅横に、複合公共施設として、全て一つの建物に集約する,今回の事業計画は、アフターコロナの社会における、分散型への環境配慮や、住民ニーズ、必要な公共施設のありかたについて、改めて再考すべき時期にあるのではありませんか。

 今回の事業計画では、門司港駅前でレトロ地区に近いことを良しとし、にぎわいの創出等が目的の中心にありますが、本来は土地収用法の公益上の必要性の要件からしても、市民の行政サービスが重要であるべきとなぜ考えないのでしょうか。公共施設計画の本質は駅前やレトロ地区の観光客の賑わいの為の大規模な建物建設計画ではなく、住宅地に近接した住民サービスにあるのではないですか。区役所や図書館といった公共施設を集約する手法はこれからの時代には合わないということを、北九州市はなぜ気が付かないのですか。多くの都市計画の専門家が警鐘を鳴らしています。この事からしても,収用法第20条4項の「土地を収用し、又は使用する公益上の必要があるものであること」には該当しないと考えます。


第2に、収用法第20条の2項にある「起業者が当該事業を遂行する充分な意思と能力を有する者であること」の要件に該当するとことに関してですが。

 北九州市は、事業を施行する公益上の理由に「集約することでの維持管理費が削減される」と述べています、これまでの議会やパブコメ等での説明では、個別に建替えをした場合と、今回の事業のように、一つに集約した場合の比較をし、集約した方が財政負担の軽減が図れるとし、収用法の要件に該当すると主張していますが、本来比較すべきは、既存の各施設を改修し、使用し続けた場合との、試算比較が重要ではないでしょうか。これまでの市の説明では、各施設の建物が古いものなので比較はしていないとのことですが。国土交通省の指針では「長期修繕計画等行えば、古い建物も耐用年数は大きく延びる」としています。現に愛知県等では、古い既存の公共施設を長期修繕計画に基づき維持管理して行く場合と、集約建替えした場合の比較を行っています。その結果、既存施設を長期修繕計画に基き使用した方が「費用負担も少なく、地域に分散された施設の為、利用しやすさや、近隣への市場効果も現れている」と分析したデーターをホームページ上に公開しています。

なぜ北九州市はこのような、比較をされないまま本事業を進めるのですか、業務怠慢としかいえません。北九州市の公共施設マネジメント実行計画での、モデルプロジェクトとして進められてきた本事業ですが、どこがモデルになるのでしょうか? 各既存施設を集約して複合公共施設として新築する場合と既存建物を長寿命化計画にのって改修し利用して使いづける場合との試算比較を今すぐにでも実行し市民に説明すべきではないですか。


第3に、第20条3項の「事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること」の要件に該当しないのではないのかについてです。

 市は今回の土地収用法第16条の事業申請の中の、起業地選定比較において、候補地は3ヶ所であったとの説明をしている点です。このことはこの複合施設の敷地選定の決定過程において、問題があるのではないでしょうか。なぜならば、これまでの市の説明では、今回の申請案である民間所有(JR九州)の第1案候補地と、西海岸の北九州市所有の候補地の2ヶ所のみでありましたが、本事業申請書では、私たち市民に知らされていなかった国所有の第3案の老松公園の敷地のことが記載されています。またその比較表の欄外の説明によると、第3案は、社会的条件「市街地や門司港レトロ地区から遠く、利便性の向上や市街地の賑い創出効果が期待できないこと」が劣ることから、公共事業評価事前評価1以前に候補地から外れた為、経済評価を未実施としたとしています。この地には、北九州市所有の門司市民会館,国所有の敷地に建つ門司図書館の既存施設があり、比較表でも敷地に余裕があり技術的条件は良いとされています。なぜ第3案含めて、市民や議会、有識者等に説明もせず、判断も仰がなかったのでしょうか、市民の住む住宅地や商店街(市街地)からでは、この3案の候補地の方が明らかに近いのではないでしょうか。


 第4に、土地収用法に基く、重要な事項であります「防災」についてです。

 他県の土地収用法の公聴会での議論の例を少しご紹介いたします。愛知県日進市の「道の駅」の事業の土地収用法の公聴会議事録を見ると、 起業者である日進市の市長が自ら公述人で発言されています。その中に、防災の観点からの発言があります。以下、市長の発言です。そのまま代読します。

道の駅は、防災拠点として災害等に対する地域防災力の向上を果たすものであります。・・・候補地を3案選定しました、その候補地の第2案は、洪水浸水区域に指定されていることから、社会的条件での比較で他の候補地からも劣るとして選定から除外しています。本事業が地域全体の活性化や市民の生命を災害から守り

利用者の安全確保と広域災害に対処すべく、実施する必要がある事業でありますと」述べています。このように防災について比較検討し敷地選定している事例があります。

 また、国土交通省総合政策局が2020年3月発行した「公共建築物事業認定申請事例の、事業申請書の候補地比較表の項目の中にも、防災拠点の項目があります。 なぜ今回の北九州市の候補地比較表にはないのですか。疑問です。防災に関する社会的条件の重要なポイントを議論、検討もすることなく進めて今回、福岡県に事業申請するのでしょうか。北九州市はなぜ、県が作成した、ハザードマップでの高潮浸水区域内に該当する敷地に公共施設である区役所を建設することに、防災上なにも、疑問を感じないのでしょうか。県は、そのような事業申請の認可を認められるのでしょうか。

 また、本年度開催中の、北九州市の都市計画審議会でも、立地適正化計画について諮問委員会が開かれています、ここでの重要なポイントは「2020年6月国土交通省は都市再生特別措置法が改正され、立地適正化計画に「防災指針」の作成が位置付けられたとのことです。その背景は自然災害がひん発し激甚化の傾向にあるとのことです。またその資料の中には、今回の予定地は高潮時5m以上の浸水が想定され、最大12時間継続して浸水する地域とされています。このように市の審議会で議論されている中、またその結論も出ていない中今事業を申請するのはおかしくないですか。また、本事業申請には何も防災対策についての記述がありません。なぜですか?

 昭和28年の大水害の時は、今回の建設予定地は、浸水し、大きな被害を受けました。その反面、現区役所は、高台の安全な場所にあった為、何の被害もなく防災拠点や避難施設としての、機能を果たしました。

 何度もいうようですが危険な高潮浸水区域となっている地域にわざわざ、複合施設を建設するということは、土地収用法の第20条2項3項4項の要件に該当するとは思えません。現在の北九州市の起業者としての能力見識を疑います。

 また、あわせて津波災害特別警戒区域に隣接する当地ですが、災害時の拠点である区役所や生涯学習センターの建設に関しては、建築の規制上「津波防災地域づくりに関する法律第123条」からしても問題があるのではないですか。このことは、間接的には土地収用法の要件からしても、該当しないのではないでしょうか。北九州市は「予想以上のことが起きる時代、事前にBCP(事業継続計画)により。他の安全な施設を、災害時の拠点として、事前指定し、対応するから大丈夫です」と市民説明会で述べていますが、このことは裏を返せば「ここは危険な地域であることを自ら認めているということではないですか、このようなリスクのある、計画を本当に、このまま、認可していいのでしょうか。


第5に、土地収用法における、事業認可の関係ですが、国交省等の指導等では、公共施設建設における敷地選定においては、原則「国県市有地であること」「災害上問題のない所」という記載があります。また他都市の庁舎建替えの場合、この2点は土地収用の前提条件として考慮すべき重要な問題とありますが、本市ではなぜ、その2点について反対のことを行うのでしょうか。当初基本計画では、敷地は借地との試算での事業計画でしたが、なぜ検証業務の中で購入になったのか、この間の市の説明では不十分と考えます。

 また、まだ、県の土地収用法による、事業認定が許可されていないなか、実施設計に入るのはおかしくないですか、他県の実例をみると、事業許可がおりて、次の実施設計に入っています。また国土交通省土地収用管理室によると、通常では「事業の許可申請にことたる状況内で申請し、次の段階に進むのが基本である」とのことです、県として事業許可を認定するにあたり、この点について、「土地を収用するに値する公益性を有する認定もないまま」起業者は、実施設計に入っていることに問題ないか、慎重に判断していただきたいと思います。


最後に、本当にこのまま認可していいのでしょうか?

 本来まちづくりは、市民一人ひとりが、それぞれの立場から「自分ごと」としてとらえ、参加できるものとして事業を進めるべきものではないでしょうか。

 多くの市民が心配する、この浸水区域内に、このまま計画が進むことに大きな危惧を抱かざる負えません。今一度、立ち止まることも重要ではないでしょうか。

 重ねて審議会の委員の皆様が是非慎重に判断して、この複合公共施設事業が土地収用法第20条に反するということで事業認定しないという結論にいたるよう強く要望して、わたくしの公述とします。ありがとうございました。


                            2022年10月14日

                          福岡県土地収用法公聴会 

                             山内 正一  


補完資料として事前に説明資料として提出したものです。








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